グローバル・ガバナンス・コンプライアンス

家庭連合の顧問弁護士をしておられる中山達樹氏の著書です。
中山弁護士のご専門は、実は宗教法人関連ではなく、企業のグローバル展開における法的リスクマネジメントです。

私は家庭連合においては一信者でしかなく、人生のほとんどの期間を前職の会社(家庭連合とは全く関係がありません)で過ごしてきましたから、中山弁護士の専門分野については、大変興味が惹かれました。というのは、私は前職で、上海とマレーシアの子会社の経営に携わったことがあるからです。この本には、海外会社経営で私自身が体験し、困ったことが、極めて明快に解説されていました。

例えば、コンプライアンスよりガバナンスが上位にあると書いています。海外の社長に全権を任せてしまうと、コンプライアンスには限界があります。内部統制の限界とも言われますが、社長自ら不正をすると、内部統制だけでは歯止めをかけられないからです。だから外部からの視線を入れるガバナンスが大切だというわけです。

逆に、社長が現地で苦労しても、本社が理解せずに原則論でしか対応しないと、意識のずれが発生することがあります。現地の社長から本部に対して、「OKY」(お前ここにきてやってみろ)「OKO」(お前ここにおったやろ)という不満が出るというわけです。

私自身、日本では考えられない、教科書に書いていないようなことをいくつも経験しました。そんな時に、現地社長を孤立させないためには、サポーティブな本社の支援が必須で、それが本当の意味でのガバナンスだと思う次第です。この本には、そのような視点が基底に流れていて、現実に即したクオリティの高い本だと思いました。

このような立派な弁護士が家庭連合の顧問弁護士として外部の視点で見て下さることは、とても心強いと思う次第です。