インテグリティ

最近SNSでも活躍されている弁護士の中山達樹氏の著書です。読んでみましたが、非常に優れた本です。左側に文章、右側にチャートが書かれていて、理論的にも直感的にもわかりやすく解説されています。以下私なりの要約です。

企業経営において、「コンプライアンス」の重要性はよく耳にしますが、「インテグリティ」という言葉は、まだ一般的ではありません。
日本で使われているコンプライアンスは拡大解釈を続けていて、当初は「法令・規程遵守」のみを意味していましたが、企業倫理、社会要請(CSR=Corporate Social Responsibility)等、範囲が広がっています。欧米では、企業倫理、社会要請等は、インテグリティと表現されています。

コンプライアンス違反には2つの類型があります。
①ムシ型
会社の利益に反して個人が不正をするパターン。悪い虫を取り除けば問題は解決します。
②カビ型
個人の利益ではなく組織の利益のために、個人が見て見ぬふりをします。組織文化の問題なので個人を特定しても解決しません。
カビ型に対しては、従来型のコンプライアンスは通用せず、組織全体を改革するインテグリティが重視されるというわけです。

インテグリティ(Integrity)の直訳は完全性です。個人としては言っていることとやっていることが一致している(すなわち高潔・誠実)、組織としてはトップマネジメントからメンバーまでOne Teamとして企業理念を共有して社会の期待に応えること、という意味です。個人から組織全体にまで、一貫性があるということです。

日本社会は「恥の文化」であり、同調圧力が高く、カビ型が繁殖しやすいのですが、欧米では「罪」の文化なので、「神は見ている」として自浄作用が働きやすい面があります。しかし日本でも「お天道様」が見ているという考え方があり、それがインテグリティの基本精神であると言っています。

組織のマネジメント面でも、インテグリティを進めることにはメリットがあります。One Teamを実現するためには、コミュニケーションをよくする必要があり、そのためには組織文化を変えなければなりません。これは、組織が成果を出すための必須要件でもあります。一人一人が自主的に貢献することで、その組織は最大限のパフォーマンスを発揮することが、立証されているからです。

以下は、この本を読んだ上での、私の所感です。
家庭連合も、2009年にコンプライアンス宣言をして、2022年に教会改革に取り組んでいます。理不尽な批判もされていますが、反省すべき点も多々あり、これは教会が生まれ変わるためのチャンスであるとも言えます。
私たちが、単に「法令さえ守ればいい」という従来型のコンプライアンスに留まるのか、それとも「社会から必要とされ尊敬される教会になる」というインテグリティを目指すのか。
これは、教会本部だけが行うものではなく、私たち信者自身が自らに問いかけるべき問題だと思います。なぜなら、インテグリティとは、自主性にこそ、その意味があるからです。