マインド・コントロール
全国霊感商法対策弁護士連絡会(以下、全国弁連)の事務局で活動する、紀藤正樹弁護士の著書(以下、本書)を読んでみました。
紀藤弁護士は、家庭連合に対する批判の急先鋒に立ち、数々の訴訟にも関わり、拉致監禁被害にも関与していることは、言うまでもありません。その中心的な論理は、一言でいえば、「家庭連合の信者はマインドコントロールされていて、高額献金の被害を受けている」というものです。
それでは、紀藤弁護士はマインドコントロールについて、どのように説明しているのでしょうか。
紀藤弁護士は、誰かが他人の影響を強く受けること全般を、マインドコントロールと言っているわけではありません。例えば、野球コーチが選手の生活・考え方に強い影響を与えることは、マインドコントロールではないと言っています。マインドコントロールとは、「目的、方法、程度、結果などを見て、それらが法規範や社会規範から大きく逸脱している場合は、これをマインドコントロールと判断して問題視すべきである」(P47)としています。つまり、結果から判断する、ということです。
「カルト」についても同様で、「カルトは実態を伴う帰納的な言葉であって、演繹的な言葉として使うのは間違っている」(P139)、「万人が認めるカルトの厳密な定義など、存在しません」(P140)と、言っています。やはり、結果で判断するということです。
要するに、「マインドコントロール」とか「カルト」という言葉は、それ自体には意味がなく、結果によって後から意味づけをする言葉なのです。したがって、紀藤弁護士の定義によっても、個別の事案の検討なしに、「家庭連合はカルトである」とか、「家庭連合の信者はマインドコントロールされている」いうことはできないことになります。「カルト」や「マインドコントロール」は結果であって、原因ではないのです。
ところが、全国弁連をはじめ、マスコミや行政は、家庭連合はカルト宗教であり信者をマインドコントロールしているという理由で、家庭連合を反社会的団体であり、解散すべきと決めつけています。
消費者庁が令和4年10月17日にとりまとめた「霊感商法等の悪質商法への対策検討会 報告書」(以下、報告書)では、「マインドコントロールから抜け出すためには相当程度の時間を要するとの指摘がなされている」(P5)、「マインドコントロール下にあって合理的な判断ができない状況が問題となる霊感商法等に対応できるものとして法制化に向けた検討を早急に行うべき」(P6)などと記載されています。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/meeting_materials/review_meeting_007/assets/consumer_policy_cms104_221014_09.pdf
検討会には、紀藤弁護士も名を連ねているので、この指摘というのは、紀藤弁護士のものでしょう。ここでは、マインドコントロールが原因であって、その結果として被害が発生しているというわけです。原因と結果が入れ替わっていて、循環論法に陥っています。
ところが報告書では、このような循環論法を論拠として、「所轄庁において、解散命令請求も視野に入れ、宗教法人法第 78 条の2第1項に基づく報告徴収及び質問の権限を行使する必要がある。」(P5)と結論づけています。そもそも消費者庁が、宗教行政に口出しすること自体がおかしいのですが、マスコミがあおった結果、文部科学省はこの報告書に従って質問権を繰り返した結果、にっちもさっちもならない状況となっています。
https://bunshun.jp/articles/-/62476
どうしてこういうことになるのでしょうか。結局、宗教に対する偏見があるからだと、私は思います。信者の自主的な信仰を尊重せず、マインドコントロールされていると決めつけるのは、偏見以外の何物でもありません。