マリアの涙

「イエスの涙」に続く、神学者ピーター・シャビエル氏による、聖母マリアに関する小説です。

キリスト教は、カトリックとプロテスタントを始め、多くの教派が存在します。その中で最も伝統的なのがローマ・カトリックであり、教義のポイントの一つが、「無原罪の御宿り」即ち聖母マリアには原罪がないということです。だからカトリック信者は、十字架と共に、聖母マリア像を大切にします。
私が通った高校もカトリック系でしたから、聖母マリア像がありました。私はキリスト教徒にはならなかったけれども、優しい聖母マリア像には、親しみを感じていました。

遠藤周作の「女の一生」のテーマである、江戸末期の隠れキリシタンが、パリの宣教師と250年ぶりに出会ったのも、宣教師が建てた大浦天主堂の聖母マリア像を、隠れキリシタン達が見たからでした。

ところが、マリア様は、我が子イエス・キリストの心がわからず、却って悪霊に取り憑かれていると誤解し、イエス様の行く道を支えるどころか逆の働きをしたというのです。そのことを悔いたマリアを、「悔い改めたマリア」として描き出したのが、「マリアの涙」のテーマです。

キリスト教、特にカトリックから見たら、とんでもない内容だと思います。しかし、人類の罪を背負って十字架の道を行かざるを得なかった、言うに言われぬイエスの悲しい心情、自らの罪を悟り悔い改めたマリアの思いを想像すると、2000年にわたって解かれなかった、神の悲しみの一端に触れることができるように思います。