国家と宗教(2)

「国家と宗教」の著者である南原繁は、1945に東京大学総長に就任した人物です。学生時代に新渡戸稲造の講義を聞いて感動し、内村鑑三に師事し、キリスト教を背景とした思想により、理想社会はどうあるべきなのか、哲学的に整理しました。

南原繁の後、1951年に東京大学総長に就任したのが、矢内原忠雄です。彼も内村鑑三が主催していた聖書研究会に入門を許され、キリスト教への信仰を深めていきました。

このように、東京大学の戦後の総長は、二人続けて、キリスト教の背景を持った人物でした。
しかし、矢内原総長の時代以降、学生運動が激化し、学内に共産主義の嵐が吹き荒れました。左翼学生が安田講堂に立てこもって機動隊が導入された安田講堂事件など、学内が荒れてしまい、キリスト教的な背景による理想国家ではなく、マルクス主義による暴力革命が叫ばれるようになってしまいました。

東京大学は、国家に影響を与える多くの人を輩出する拠点です。南原繁や矢内原忠雄の精神に立ち戻り、海外から尊敬されうる高い視点を持つ人材が育つことを、願ってやみません。