国家(下)

プラトンの哲学書の後編です。

国家という書名ですが、解説を読むと、テーマは「正義」と「国家」となっています。

正義について、プラトンは、人間は哲学によって善を追求できると考えていて、イデア論にそれが集約されています。そして哲学を極めた哲人が国家を治めることが理想であって、それ以外の国家統治の形態は有害だと考えていたようです。

民主制は、支配者が自分勝手に統治するようになるから、悪い制度だとプラトンは考えました。
しかし、哲人なる理想的な統治者が、国家を統治するのは理想論に過ぎず、結局国家は強いものが支配するという力の論理が、まかり通ってきました。

現代の民主主義は、プラトンが考えていたものとは、形は似ていますが、本質は異なります。
民主主義の原則は、少数意見の尊重と、多数決原理です。その根底にあるのは、神は少数の者にも働きかけるので、少数意見を尊重しないと、神の意志を見逃してしまう可能性がある、ということです。少数意見をよく聞いた上で、最後は合理的な方法、すなわち多数決で決定するというのが、現代の民主主義の要諦なのではないでしょうか。

神を中心としない民主主義は、うまくいきません。プラトンの理想国家は絵に描いた餅だったし、共産主義国家も、国の名前に民主主義という文字が入っていながら、実態は独裁国家です。
人間は、神の前に謙虚であるべきで、そのような国家あり方が、必要なのだと思います。