チューリングと同性愛

NHKの、「フランケンシュタインの誘惑」で放送された、「強制終了 人工知能を予言した男」は、70年も前に「人工知能(AI)」を予言したイギリスの天才数学者アラン・チューリングの悲劇の物語です。
https://www.nhk.jp/p/ts/11Q1LRN1R3/episode/te/289WZ3XYR4/

チューリングが1936年に発表した論文には、コンピューターの概念が書かれていました。
それまで計算とデータが分離されていた機械を、プログラムをデータとして扱うことで、一つの機械でどのような計算でもできるというコンセプトです。これを発展させ、機械が自ら学ぶことができると預言したのが、人工知能だというわけです。

その後チューリングは、イギリス政府に招聘され、第2次世界大戦中、解読不可能と言われたナチス・ドイツの暗号エニグマを解読することに成功しました。
ナチス・ドイツの情報を把握し、情報操作することで、連合国を勝利に導きました。しかしその業績は軍事機密ゆえに戦後も長く封印されました。

戦後、チューリングは、同性愛者として逮捕されました。
キリスト教国家であるイギリスの、当時の法律では、同性愛者は犯罪とされていたからです。
彼は、女性ホルモンを投与する強制治療を受け、最後は青酸カリを含んだリンゴをかじった姿で、自殺しているところを発見されました。
その姿は、アダムとエバが、禁断のリンゴを食べて堕落したという、旧約聖書のエピソードをなぞらえたものなのか、今でも謎となっています。

私は、番組の趣旨からは少しずれてしまうかもしれませんが、彼の死に関するエピソード、すなわちキリスト教国家であるイギリスでは、同性愛に対して犯罪として扱われていた点を、興味深く視聴しました。なぜなら、日本では、同性愛に対しては、非常に寛容であり、このような差別は行われて来なかったからです。

欧米のキリスト教国家で始まった、同性愛に対する差別禁止の法制化は、法律的な差別に対処するために必要だったかもしれません。
しかし、日本では、法律的に、同性愛者を処罰することは、これまでありませんでした。
法律・文化の背景が異なる日本社会で、欧米に遅れてはならないなどと言って、LGBT理解増進法や、同性婚法制化などを急進的に進めることは、非常に危険だと思います。