空想より科学へ
マルクスの盟友、エンゲルスによって、1882年に書かれた著書です。もともとは、「反デューリング論」という大著があり、その中から3章を抜粋して書かれました。
それまでの社会主義は、理想論的、抽象的であったところ、マルクスは、経済学においては資本論における労働剰余価値説を中心とした経済論、哲学においては弁証法的唯物論、歴史学においては史的唯物論として、科学体系を確立しました。このマルクスの思想を、短い文書にまとめたのが、本書です。
本書では、史的唯物論において、歴史発展を理論的に述べています。
封建主義の時代から、社会の経済的発展に応じて絶対王政の時代になり、ブルジョアジーが力を持つようになると、共和政の時代になりました。その次には、搾取されてきたプロレタリアートが立ち上がり、生産手段はプロレタリアートが支配する国家のものになり、最後は国家もなくなって、世界が統一される、というものです。
歴史観を持ったことは、共産主義の大きな力となりました。未来に対して、希望を持つことができるからです。
しかし、その歴史観は、全ての歴史は、最後はブルジョアジー階層とプロレタリア階層の、階級闘争に帰結するというもので、暴力による革命を正当化するものでした。
ソ連のスターリンも、中国の毛沢東も、この理論を論拠に、国内における反対者を、反革命勢力として粛清しました。
毛沢東の、文化大革命は有名であり、その体験を自叙伝的に書いた、ユン・チアン著「ワイルド・スワン」は、生々しいものです。
https://www.ogasawara-church.jp/blog/20211014/355//
しかし、史的唯物論が、誤りであったことは、、1991年にソ連が崩壊したことで、歴史が証明しました。
共産主義は、科学を掲げて、知的に人を惑わすという点、今日も気をつけなければならないことです。