解散請求を前提とした質問権の行使

政府は、家庭連合の解散請求を前提に、3回目の質問権を行使しました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230118/k10013952931000.html

宗教法人の解散については、宗教法人法第81条に規定があり、所轄庁(この場合は文部科学省)が、裁判所に解散請求をして、裁判所が解散命令を出すという手順を踏みます。刑事事件ではないので、民事裁判になります。
裁判所の命令(厳密には決定)ですから、家庭連合が裁判所に呼ばれて口頭弁論を経て判決が出されるのではなく、裁判所が判断して解散命令を出します。(民事訴訟法第87条第1項但書)

その際の判断材料は、文部科学省の質問権で得た資料のみです。質問以外の資料(例えば、前回書いた、信者の2万通もの嘆願書)は、考慮されません。
裁判所の判断で、解散される当事者である、家庭連合を、審尋する可能性はありますが(同法第87条第2項)、その保証はありません。
つまり、一連の解散命令の手続きに、家庭連合が反論を差し挟む余地はないし、信者の思いが反映されることもないのです。

そのような危険な規定なので、解散請求の適用については、これまでの裁判所の判例で、代表者の刑事事件を要件とするなど、慎重な運用が行われてきました。(東京高裁抗告審決定(平成7年(ラ)1331号) 第三/一/1 解散命令の意義)
https://www.cc.kyoto-su.ac.jp/~suga/hanrei/141-2.html

ところが、岸田首相は、2022年10月19日、前日までの従来の判例遵守の方針をわずか一晩で引っ繰り返し、民事事件も解散請求の要件とすると言い出したのです。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221019/k10013863551000.html
これが、今回の家庭連合の解散請求の流れを一気に作り出しました。信教の自由に対する配慮に欠ける、あまりにも乱暴で杜撰な判断だと言わざるを得ません。

国家が、家庭連合の言い分を一切聞かず、数万もの信者の信仰の拠り所となる教会や施設を奪い去り、魂の拠り所を踏みにじる。

民主主義国家である日本において、そんなことが許されてよいのでしょうか。戦前の全体主義国家に逆戻りです。これは家庭連合だけの問題ではありません。我が国における、信教の自由の、最大の危機なのではないかと思います。