コーラン(上)

世界に数億人の信徒を持つイスラム教の経典です。何がここまで人々の心をつかみ、厳しい生活規範に従わせるのか、とても関心があります。

コーランは、アッラー、すなわち神が、預言者ムハンマドに与えた言葉です。

アッラーのみが唯一の絶対神であり、いわゆる一神教です。旧約聖書や新約聖書に登場する、アダムやノア、アブラハム、モーセ、マリア、イエスといった人々も、神が選んだ者として、尊敬しています。

イスラム教とキリスト教は、十字軍以来今日に至るまで、宗教的にも政治的にも対立しているので、コーランではイエスを否定しているのかと思ったら、そうではありません。イスラム教が問題視しているのは、イエスを神と同じものとしているのが、アッラー以外の者を神としてはならない、という教えに反するからです。イエスはあくまで預言者の一人であって、最後の預言者はムハンマドだから、コーランこそがアッラーの教えである、というのが、キリスト教との対立点なのでしょう。

コーランに対する、もう一つの印象は、アッラーを厳格と慈愛に満ちた存在としていることです。厳しい時は容赦ないが、優しい時は徹底して優しい、頑固親父のようイメージです。だから、戦うべき時は、勇ましく戦わなければなりません。この辺りが、イスラム教とテロリズムを結びつけてしまう誤解の原因なのかもしれませんが、アッラーは好戦主義者なのではなく、あくまで平和主義者です。

私がマレーシアで工場の経営を任されていた時、運転手がマレー人で、敬虔なイスラム教徒でした。とても温厚で、誠実な男でした。宗教も、正しく理解することが、大切だと思います。