空気の研究

日本の思想家で、「日本人とユダヤ人」の著者である、イザヤ・ベンダサンの別名でも知られる、山本七平の著書です。山本七平は、キリスト信者でもあり、特に旧約聖書の研究で有名な人です。西洋の文化の基礎である、固定軸を大切にする発想と、日本の意思決定に強く影響する、状況による倫理感、すなわち「空気」についての論評です。

著者は、日本人はその場の雰囲気に影響されることが多く、例え自分で間違っていると思っても、異論を主張することがない。それどころか、異論を言うものがあれば、それを攻撃するが、それは論理的ではなく、空気に反しているからだ、というようなことを言っています。

それが重要な決定、例えば、戦艦大和が、米軍に制空権を取られている沖縄に向けて単独出港するというような非合理的な決定を、「あの状況では、そう決定せざるを得なかった」と、戦後言い訳する元幹部の話を紹介し、結局意思決定において、責任者が不在で、空気が支配する意思決定プロセスは、日本人の特徴だというわけです。

戦前、日中戦争や太平洋戦争などを、なぜ初めてしまったのか、現代に生きる私たちにはとても不思議ですが、「空気」によって意思決定が支配されるという特質は、今の日本にも残っているように思います。