漂流 日本左翼史

池上彰氏と佐藤優氏による、日本の戦後左翼を分析する3部作の、最終巻です。第1部は1945年〜1960年、第2部は1960〜1972年、第3作は1972年〜2022年です。

戦後左翼は、日本共産党vs社会党・新左翼という勢力でしたが、新左翼は暴力路線が世論の支持を失い、社会党は村山政権の後存在意義を失いました。生き残った日本共産党も、ロシアのウクライナ侵攻で、絶対的な反戦主義から、防衛のための戦争を容認し、自衛隊も認めるという方針になり、ナショナリズムに傾きつつあると分析しています。

そして、左翼には革命により世界平和が訪れるという理想があったけれども、そうした軸がなくなり、人々を惹きつける力を失っているというのです。

佐藤優氏は、最後にこう書いています。

キリスト教には左翼的な価値観も包摂されている。

「隣人を自分のように愛しなさい」

左翼の人々は、神なき状況で実践しようと命がけで努力してきた。しかし、神不在のもとで、人間が理想的社会を構築できると考えること自体が罪なのだ。

宗教にしろ、思想にしろ、行きつくところは同じなのかもしれません。歴史の様々な経験を振り返りながら、よりよい未来を築くことができれば、それ以上のものはありません。